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コーヒーの「スペシャリティ」と畳の意外な共通点。実は畳表はもっとこだわって作られています

こんにちは。

尼崎の畳屋のミツローです。

毎日、本当に暑いですね。

最近では40℃を超えるような酷暑日も珍しくなく、「外へ出るだけで体力が奪われる」と感じる日が続いています。

こんな日は、つい喫茶店へ避難したくなります。

先日も仕事の合間に喫茶店へ入り、アイスコーヒーを注文しました。

エアコンがよく効いた店内で冷たいコーヒーを飲むと、それだけでホッとします。

「もう外には出たくない!」

そんな気持ちになるくらい快適でした。

喫茶店の「ブレンドコーヒー」

喫茶店へ行くと、多くのお店で「ブレンドコーヒー」があります。

私も、迷ったらまずブレンドを注文します。

ブレンドコーヒーとは、複数の産地や品種のコーヒー豆、あるいは焙煎方法の異なる豆を組み合わせ、お店独自の味や香りを作り上げたものです。

苦味と酸味、香りやコクのバランスを考え、それぞれのお店ならではの一杯に仕上げています。

一方で、「モカ」や「キリマンジャロ」のように、一つの産地・一つの品種だけで楽しむものは「ストレートコーヒー」と呼ばれます。

豆本来の香りや味わいをダイレクトに楽しめるのが魅力です。

そして最近よく耳にするのが「スペシャルティコーヒー」です。

これは単においしいコーヒーという意味ではありません。

生産地や栽培方法、収穫、品質管理、焙煎、抽出まで徹底して管理された、高品質なコーヒーのことです。

どこの誰が育てた豆なのかが分かり、適正な価格で取引されることで、生産者の暮らしや環境にも配慮されています。

品質だけでなく、生産者の想いまで伝わるコーヒーと言えるでしょう。

畳表はコーヒーで例えるなら「スペシャルティ」

実は畳表も、コーヒーで例えるなら「スペシャルティ」と言える存在です。

畳の材料になるいぐさは、熊本県を中心とした農家さんが丹精込めて育てています。

そして多くの場合、その農家さん自身が畳表まで織っています。

つまり、一人の生産者が育てた、同じいぐさだけを使って一枚の畳表を織り上げているのです。

「それならコーヒーのスペシャルティと同じだな。」

そう思われるかもしれません。

ところが、畳表はさらに細かいこだわりがあります。

同じ農家でも田んぼを混ぜません

いぐさ農家さんは、一枚の田んぼだけで栽培しているわけではありません。

いくつもの田んぼでいぐさを育てています。

しかし、畳表を織る時には同じ田んぼで育ったいぐさだけを使います。

もちろん、同じ品種だけです。

「そこまでこだわる必要があるの?」

と思われるかもしれません。

実は、いぐさは品種によって太さが違います。

太さが違えば、織り上がった畳表の見た目も変わります。

さらに、品種によって伸び方も違うため、長さにもばらつきが出ます。

畳表を織る前には、いぐさを長さごとに丁寧に選別します。

異なる品種が混ざっていると、美しく織ることができません。

だからこそ、品種を混ぜることなく、同じ田んぼ・同じ品種のいぐさだけを使うのです。

お米との違い

お米を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。

スーパーで販売されているお米は、「コシヒカリ」「ひのひかり」など品種ごとに分けられています。

もちろん、ブレンド米もあります。

また、道の駅などでは、生産者の顔写真が載ったお米も販売されています。

少し値段は高くても、「この人が作ったお米なんだ」と安心して購入できますよね。

畳表も同じように、生産者が分かる商品です。

しかし、実際にはお米以上に手間をかけています。

生産者によって色合いまで違います

いぐさは収穫したあと、すぐに「染土(せんど)」という天然の土を使った工程を行い、乾燥させます。

この染土の配合は、生産者ごとに少しずつ違います。

また、育て方や乾燥方法も農家さんそれぞれ。

そのため、同じ品種でも生産者が違うと、色合いや風合いが微妙に変わります。

畳は、お部屋に敷いた時の美しさがとても大切です。

だから、生産者が育てたいぐさを、その生産者自身が管理し、畳表へと織り上げることで、美しい品質を保っているのです。

畳表には「生産者の証」があります

実は、畳表には数枚に一枚ほど、生産者の名前が書かれたタグが織り込まれています。

これは「この畳表は私が作りました」という、生産者の誇りでもあります。

もちろん、中には製織専門の職人さんもいます。

以前はいぐさを育てていたものの、高齢になり、現在は畳表を織ることに専念されている方もおられます。

その場合でも、多くは決まった生産者のいぐさだけを使って織っています。

だから品質が安定しているのです。

畳は顔が見えるものづくり

畳は、ただの床材ではありません。

どこの誰が育てたのか分かる天然素材であり、生産者のこだわりや技術が詰まった日本の伝統工芸品でもあります。

コーヒー好きの方が産地や農園にこだわるように、畳にも生産者ごとの個性があります。

それぞれの農家さんが一年かけて育てたいぐさが、一枚の畳表となり、ご家庭の和室へ届けられるのです。

畳替えをされた際には、ぜひ畳表に付いているタグを探してみてください。

そこには、生産者の名前や産地が記されています。

普段はなかなか気付かない小さなタグですが、その一枚には、生産者の想いと品質へのこだわりが詰まっています。

畳を見る目が少し変わる、そんなきっかけになればうれしいです。