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「部屋に入るところの畳だけ傷んできたから、別の場所の畳と入れ替えたら長持ちするかな?」

お客様から時々こんなご相談をいただくことがあります。
しかし、実は畳は家具のような既製品ではありません。
一枚一枚が、そのお部屋のためだけに作られたオーダーメイド品なのです。
そのため、傷んだ畳を別の場所と入れ替えることはおすすめできません。
今回は、なぜ畳を勝手に入れ替えてはいけないのか、そして畳の傷みが教えてくれる「替え時」についてお話します。

畳は工場で同じ大きさに大量生産されているわけではありません。
和室を採寸すると、実は同じ六畳間でもすべての畳が同じ寸法とは限りません。
昔の家はもちろん、新しい家でも壁のわずかな違いや柱の位置によって、数ミリから数センチ程度の違いがあることもあります。
そのため畳屋は、お部屋を丁寧に採寸し、その場所に合った畳を一枚ずつ製作しています。
つまり、
「この畳はこの場所」
「あの畳はあの場所」
というように、最初から敷く位置が決まっているのです。
畳は寸法だけでなく、敷く向きも決まっています。
畳表の目の向きや光の当たり方によって、同じ色の畳でも見え方が変わります。市松模様のように見えるのも、畳の向きを交互に敷いているからです。
もし別の場所へ移動させてしまうと、
・隙間ができる
・段差ができる
・畳が浮いてしまう
・見た目のバランスが崩れる
といった問題が起こることがあります。
無理に押し込んでしまうと畳を傷める原因にもなります。

和室の入り口付近の畳だけが傷んでいることがあります。
これは決して異常ではありません。
人は毎日同じ場所を歩きます。部屋へ入る時も出る時も、同じ畳を踏むため、その部分だけが先に擦り切れてしまうのです。
毛羽立ちが目立ったり、色が変わったり、ささくれが出てきたりすることがあります。
「ここだけ傷んだから別の場所の畳と交換しよう」
と思われるかもしれませんが、その畳が傷んだということは、そのお部屋全体の畳が年月を重ねている証拠でもあります。
入り口の畳が傷んできたら、それは畳からのサインかもしれません。
畳表が擦れてきたり、色が茶色くなったり、い草が服についたりするようになれば、表替えを検討する時期です。
表替えとは、畳床はそのまま使い、表面の畳表と畳縁を新しく交換する工事です。
新しいい草の香りが戻り、お部屋全体が明るくなります。
「まだ使えるからもう少し我慢しよう」
と思われる方も多いのですが、傷みが進みすぎると畳床まで悪くなり、表替えではなく新調が必要になる場合もあります。
早めのメンテナンスは、結果的に費用を抑えることにもつながります。
畳は毎日踏まれ、座られ、寝転び、家族の時間を支えてくれています。
だからこそ、入り口の畳が傷んできたということは、その畳がしっかり役目を果たしてきた証拠です。
無理に他の場所の畳と入れ替えるのではなく、
「そろそろ替え時かな?」
と考えてみてはいかがでしょうか。
畳は部屋に合わせたオーダーメイドです。
一枚一枚に決まった場所があり、その部屋のために作られています。
もし入り口の畳が傷んできたら、それは畳からのメッセージかもしれません。
和室をこれからも気持ちよく使うために、一度畳の状態を確認してみてください。
表替えをすることで、い草の香りとともに、まるで新しい部屋のような心地よさが戻ってきます。